プレイヤー5人が、ハンター4、モンスター1に分かれて対戦するという、野心的なゲーム『Evolve』。開発はLeft 4 Deadなどを手がけた「Turtle Rock Studios」で、ゲームエンジンには珍しくCryEngineを使用している。
ぱっと聞いただけで、ゲーマーなら一度は夢見る面白そうなこのコンセプト。しかし、興味を惹かれると同時に、それってバランス上手くとれるのかという疑問が湧いてくるゲームだ。キャラもほぼ全てアンロック、一部エリートも取得し、3月末には新ハンターとパッチが来るので、それまでの記録として一度レビューを書いておこうと思います。
※この記事は2015年3月25日までのEvolveでのプレイをレビューしたものです
挑戦的なゲームデザイン
プレイヤー5人が全く異なった特性を持ったキャラクターを使ったうえで、4人対1人に分かれて闘うという、非常に挑戦的なゲームデザインが本作の特徴だ。実際に、一般ユーザーだけでなく、ゲーム関係者からも注目される要因が「本当に、それを上手くゲームとして成立させられるのか?」という点だ。
本作は、大きくは上手くバランスが取れているように感じる。だがしかし、上手くいかなかった部分も多いようだ。ゲーム・オブ・ザ・イヤーに輝いてもおかしくない勢いだった本作だが、ちょっと現状では微妙なところだ。
アンロック要素はEvolveを続ける重要な要素
ハンター側プレイヤー4人は、アサルト、サポート、トラッパー、メディックの4つのクラスの中からそれぞれ配役される。メディック二人といった状況はない。ただし、例えばメディックといっても異なるスキルを持った3キャラクターから選択する事ができる。これらキャラクターは、ゲームをプレイしてノルマを達成する事でアンロックされる。
個人的にはこういったアンロックはわりと好きで、ダレてきたり、萎える試合が多々ある対戦型のゲームでは、続けるモチベーションになる。今はひよっこでも、あのキャラをアンロックしたら、多少は戦えるようになるかもしれない!という夢を見ることができる。実際にはそこまで夢見てるわけではないが……。単に集めるのが好きというのもある。
しかし、このアンロックのお題が通常のプレイをしていると、他のプレイヤーに迷惑になるような行動の場合もある。なので、あまり人に迷惑を掛けたくないのであれば、ソロプレイでただひたすらアンロック行動を行わなければならない。これはすこし退屈だ。
上手くいった時は気持ちが良い
ハンター側はキャラクターの特性や、それぞれのクラスの役割を上手くこなすことでモンスターを追い詰めて倒すことができる。暗黙のうちに連携ができるととても面白い。モンスター側でも、上手くハンターを騙したり、自分の思い通りに上手く試合が運べると楽しい。
一見強靭で強そうなモンスターも、最初は弱くハンターから逃げ回る事になる。このドキドキ感、孤独感はモンスターをプレイしてみないとわからない。ここまで緊張感を味わえるゲームは稀だ。
モンスターは野生動物を捕食する事で、ステージ3まで進化して強くなる事ができる。こうなると立場は逆転する。ハンター側はなるべく進化前にモンスターを見つけて、出来る限りHPを削っておくと後半が楽になる。
腕前が均衡すると接戦になることも稀にあり、そういった白熱した試合で勝利すればEvolveならではの達成感を味わえる。プレイヤー同士の駆け引きや読み合いも、ハンター側とモンスター側では大きく異なる。そこに他のゲームにはない面白さが詰まっている。
落差のありすぎるゲーム体験
序盤はとても楽しい。モンスターの操作が特殊で戸惑いはするものの、低レベル帯はハンターもモンスターもお互いあまり立ち回りが上手くないぶん、双方にチャンスが生まれやすい。新しいゲーム体験という事もあってか、スキルや立ち回りを覚えながら試行錯誤しつつプレイするのが楽しい。
自分が未熟なぶん、他人に寛容になれるという事もあるかもしれない。
状況が変わってくるのはレベル20あたりから
レベル20くらいになってくると色々と辛くなってくる。まずモンスターを操作するプレイヤーが慣れてくる。こうなってくると野良ハンター側はやや不利になってくる。
モンスターが自分一人だけ上手ければ良いのに対して、ハンター側は4人のうち一人でも下手だと足を引っ張られる事になる。4人が全員まともな動きができるかというと難しい。また、意思疎通の手段も乏しいので、プレイの腕前とは別に連携がうまく取れない事もストレスに感じてくる。
バランスブレイカー『レイス』の登場
それらに加えて、レベル20くらいになってくるとモンスター『レイス』をアンロックしているユーザーも多くなってくる。この『レイス』がローンチ間もないEvolveに負の連鎖を引き起こす事になった。
この『レイス』は、とにかく逃げる性能と、隠れる性能、瞬発的な攻撃力が極めて高い。トレードオフとして、装甲が柔らかいという特性もある。が、その欠点は長所によってカバーされてしまう。
見つかっても逃げれるし、瞬発的な攻撃力によって一時的に戦ってすぐ逃げる事もできる。面白そうではあるけど、とにかく時間がかかる。ハンター側プレイヤーにとっては、レイス戦ゲームの開始20分は、殆どの場合ただレイスを探すだけのゲームになる。
そして20分後に、勝ち目が殆どないほど強化された(進化した)『レイス』にただ殺されるというそういうゲームになる。こういった試合のつまらなさというのは半端がなく、勝つにしても負けるにしてもなんだか微妙な気分になる。10分ぐらいで面倒になってくるのだ。途中抜けをしても、再マッチングまで1分待てばよいだけなので、20分も無駄にするくらいならさっさと抜けて次の試合へ行った方が幸せと思うのは当然だ。
『レイス』を倒せた場合でも、単にモンスター側のプレイヤーがそもそもモンスターをやりたくなくて、「さっさと終わらせようぜ……」という感じのやる気のないプレイや、単に下手だった場合が多く、熱い試合にはならない。なんとも後味が悪い。
気軽に楽しめるゲームではない
『レイス』ボイコット
このため、『レイス』自体がハブられる要因になる。モンスター側が『レイス』を選択したら、即効でリスタート投票が始まるか、ゲームを抜ける人が出る。ただただ、20分フィールドマップをうろうろ観光した後に、20分後にほぼ一方的に殺戮されるゲームは、正直言ってあまり面白いゲーム体験ではない。他のゲームをプレイしたほうがよっぽどマシだ。
マナーの問題とも言えるが、これはユーザーのマナーというよりはゲームデザイン的なバグと、システム側の不備が大きい。また、残念ながら多様な人が居るオンラインゲームとはそういう負の要素は避けられない。みんながマナーを守る理想郷はないので、そう言った負の要素が嫌いなのであればオフラインで遊ぶしかない。
不愉快に思うかもしれないが、我慢した所でずっと不愉快なゲームプレイを強いられるのだ。
マッチングしても途中参加がやたら多い
こうして、途中で抜ける人がいるから、ゲームを起動して「さー始めるか~」と思って開始しても、一戦目からいきなり途中参加で始まる事も多い。完全に劣勢な状態で始まる事も多く、やる気を削がれる。消化試合を強制される。アンロックの為のポイントを溜められるのが唯一の救いだ。
しかし、我慢して途中からプレイしても、結局試合終了後に部屋は解散となって、また再びマッチング検索が始まることも少なくない。気分転換にちょろっと遊びたいという時には、あまり向いていないゲームだ。
好きな役割をプレイできるわけではない
プレイヤーは、ハンター4種(アサルト、サポート、トラッパー、メディック)とモンスターのうち、どれをプレイしたいかの優先順位を予め決めておくことができる。だが、毎回希望通りというわけにはいかない。
まあ仕方のないこととはいえ、やはり今はモンスターやりたいわけじゃない気分の時もあれば、モンスターをやりたい気分の時もある。そう言った時に自分の希望が通らずに、希望ではないものをプレイさせられるのは、短時間でちょっと1,2戦遊びたいという場合は不満に感じる。オンライン上の見ず知らずの人の為に、接待プレイをしている気分にすらなる時もある。
また、全てのプレイヤーが、全てのハンタークラス、そしてモンスターを熟知し修練しており、モチベーションが高いというのは現実的にはありえないので、結果的にハンター側にそういった人が紛れ込む確率が高くなる分、不利な状況になりやすい。
だからこそ、普段自分がやらないキャラをプレイしたり、ハンター好きもモンスターをプレイして、モンスター視点で試合を見ることで結果的にハンターのプレイに磨きをかけるという理屈もわかるのだけど、他のハンターにとっては練習に付き合ってる(しかも負け試合)とも言えるので、なんとも上手く噛み合っていない感じがするのも事実だ。
チャレンジ的なマッチング方式だが、あまり優れたマッチング方式にはならなかったようだ。
致命的なバグや、不親切なゲーム設計が多い
試合の途中に落とされる事もあるが、致命的なのは地形バグだ。いきなり地面をすり抜けて異世界に飛ばされて死亡する。死ぬということがかなりのペナルティーであるこのゲームで、これほど萎える事はない。
また、途中参加にしても自分の強化能力(パーク)があるのかないのか、何がついてるのかわからない状態でスタートする。途中参加が多いゲームなのだから、途中参加してもゲームが楽しめるような設計を考えてほしい所だ。
また、様々なゲームモード有るにも関わらず、野良でフリーマッチングするのは「狩猟」というゲームモードのみ。極稀に他のゲームモードに途中参加する場合があるが、謎が多いマッチングシステムだ。
DLC高すぎ
私はハンターシーズンパス入のダウンロード版を購入したのだが、高い……。シーズンパス(2700円)というのだから、もう少し長い期間サポートされても良いと思っていたのだが、ハンター4人だけらしい。
シーズンパスを持っていない人はもっと大変だ。せめてハンター4人纏めて800円くらいにして欲しい所。海外ではこのDLC問題がこのゲームへの大きなネガティブ要素と捉えられ、評価を下げる大きな理由の一つになっている。
- 新モンスター『べヒモス』 950円
- 『ハンター』4人 各870円
仲間内でやるとまた違う楽しさがある
Evolveを楽しむなら、5人でパーティーを組んでボイスチャットありで遊ぶのが面白い。レイスばかりにならず、役割を交代しながら仲間内でワイワイ楽しんでいる時が一番楽しかった。やはりある程度連携を取りながらプレイできると面白いと感じる。ボイスチャットとパーティープレイを前提としたゲームバランスのように感じるので、ボッチ野良で淡々と遊ぶには少し辛いゲームだ。
LANパーティーゲーとしては、かなり面白い部類だと思う。
総評
チャレンジ精神溢れるゲームデザイン。よくここまでバランスを取れたな~とは思うが、あと一歩及ばずという印象。レイス弱体のパッチが早いか遅いかは個人差があるだろうけど、個人的には遅いと思った。亀だから仕方ないのか?という皮肉さえ言いたくなる。
Evolveでしかできない新しいPvPプレイは、体験するだけの価値はあるが、ある程度キャラクターの役割を上手く理解する所までプレイしないと面白さは理解できないかもしれない。そして、理解するレベルに達した時にレイスに出会うという、残念な結果になってしまっていたのが日本語版ローンチから今日までのEvolveだ。
予定されているパッチによってどれだけゲーム体験が変わるかは楽しみでもあるが、マッチングを始めとした微妙なシステム面がそのままでは、ごく一部の限られた人だけが細々と続けるゲームになるのではないかと思う。
様々な可能性を秘めたゲームで、単純にもう少しシステム面に自由度を与え、バランシングを細かいスパンでリリースする事でもっと面白くなりそうなのだけど、どうも頭ひとつ抜けるほど面白いゲームにはならなかった。本当に残念だ。
続編が出るのかどうかわからないが、個人的には「Turtle Rock Studios」は本作が最後になるんじゃないかという気もしている。マップをXBOX ONEだけ先行にしたのも長い目で見た時に自分たちの首を締める事になるんじゃないかと思う。「Turtle Rock Studios」の次回作は、もし買うにしても私は少し様子見をすると思う。
とにかく序盤は新鮮さもあってとても面白い。面白いのは面白いが、かなり人を選ぶゲームでもあるので、「一緒にやろうぜ!」という具合に人にオススメようとなると少し躊躇してしまうゲームでもある。私はシーズンパスを買ってしまったので、細く長く遊んで見ようと思う。そうする事で評価がまた変わるかもしれない。
ポジティブ
- このゲームでしか体験できないPvP体験
- レベル20までの新鮮なゲームプレイ
- 仲間同士でボイスチャット使って楽しめるマルチプレイ
- 次世代機らしいゲームグラフィックス
- ハンターやモンスターの育成/アンロック要素
ネガティブ
- 『レイス』のバランス調整不足とパッチの遅さ
- 値段の高い大量のDLC
- 残念なマッチング・システム
- 日本語ボイスを収録していない
- 意思の疎通がボイスチャットのみ
- 全体的にボリュームがでかすぎるオーディオ(ラウドネス値が高い)
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