最近のFIFAやウイイレといった、サッカーゲームをプレイするにおいては、リアル・サッカーの知識がある方が有利です。特にディフェンスや、フォーメーション(立ち位置)を考える際には有効です。
ということで、サッカーゲームをより楽しむため、上手くなるために、サッカーがどういうスポーツかという事を、なんちゃってサッカー好きが解説したいと思います。特に多人数でのオンライン協力プレイなどでは、下地になる考え方です。
サッカーのパスは55通りしかありません。意外と、サッカーを知っているという人でもこのような基本的な部分を体系的に理解している人は少ないものです。これを理解すればサッカーゲームだけでなく、リアルサッカーの面白さもわかってくるはずです!それでは順を追って解説していきます。
目次
選手がボールを蹴る目的は3種類
選手がボールを持って蹴る場合、大別すると3種類になります。当たり前すぎて逆に意識せずに捉えてるいる人もいると思いますが、サッカーを理解するにはとても重要な事です。
- シュート
- パス
- クリア
シュート
シュートは、相手ゴールに向かって蹴ります。『目標物はゴールネット』という事になります。当然過ぎて説明不要ですよね。
パス
パスは、味方選手にボールを渡す為に蹴ります。『目標物は味方選手』という事になります。結果的に相手に渡してしまったり、フィールドの外に出たり、ゴールに入ってしまったりする事もありますが、それはパスの本意ではありません。
クリア
クリアは、自陣のゴール付近からボールを蹴って、ボールを遠ざける為に蹴ります。何か目標物があるわけではありません。
パスとシュートは、全てゴールまでの道のり
原則としてサッカーで勝つためには、シュートを打ちゴールを決めて点を得る必要があります。全体を通してみると試合に勝つという事が重要ですが、点を入れない事には勝てません。オウンゴールや、たまたま選手に当たってゴールといった得点もあるのですが、あくまで原則としては『シュートを打つ→ゴール』です。
つまり、全体の流れとしては、いかににシュートに持っていくかという事が重要になります。このシュートまで持っていく方法(組み立て方)を、一般的にはビルドアップと呼び、様々なビルドアップのスタイルがあります。よく言う『自分たちのサッカー』と言われるものの大意がこれに当たります。
そして、そのビルドアップの要となるのが、パスとなります。もちろん、ドリブル等もありますが、ドリブルだけでシュートまで持っていけるサッカーはあり得ません。試合開始の笛が鳴った直後に必ずする事はパスです。そう、サッカーは必ずパスから始まるのです。
パスは味方選手に出すという事の意味
パスにはいろんな種類があります。それに応じて、様々な慣用的な言葉でパスの種類を表現します「足元へのパス」「スペースへのスルーパス」「クロス(センタリング)」「ロングパス」等など。
しかし、すべて『味方選手にボールを渡す』という目的は一緒です。
これは選手から選手へのパスはわかりやすいですが、スペースにパスを出すとはどういう事かを考えてみます。
ふわっと浮かせたロングパスで、サイドのスペースにボールを置くようなパス
地面を這うような低いスルーパスで、相手の裏のスペースにボールを出すパス
いずれの場合も、『現時点では味方選手は居ないけど、そこに味方選手が移動する事を想定したパス』です。つまり、スペースへのパスと言っても、結局は味方選手にボールを蹴っているわけです。パスを出す選手としては、未来予測として、そこに味方選手が来る事をイメージしてパスを出すわけです。
まあ、ミスでない限り敵選手にボールをパスしたら、それは八百長を疑われても仕方ないですねw
パスを出せる選手が10人を超える事はないという原則
ピッチ上には自分を入れて11人の自チーム選手が居ます。つまり味方選手は10人です。退場などで、減ることはあっても10人を超える事はありえません。つまりどういう事か。
言い方を変えると、自分がボールを持った時パスを出せる選手は10人という事になります。
自分ボールを持った時のパスの経路は10通り
選手から選手へのパス、これを1経路と考えると、自分がボールを持った時は10の経路が、選択肢としてあると言えます。
自チーム全体のパスの経路は55通り
そしてこれをフィルドプレイヤー全員で見た時には、パスというのは55経路あるといえます。ゴールキーパーを除くと45経路になります。
フォーメーションで見た時のパスの可能性
つまりこれがサッカーで言う『パスの可能性』と言えます。
なぜ可能ではなく、可能性なのか?それは、それぞれのパスには意味があるパスと、意味がない(薄い)パスがあり、また相手の選手という障壁を前に、通りやすいパスもあれば、通りにくいパスがあるからです。現実的なパスと、非現実的(無茶)なパスと言っても良いかもしれません。
パスの有効性と成功の確度
すこし極端な例を出します。
経路3
上記のような場合、前線まで来ておいて、味方のGKまでロングパスを出すという経路3がどれほど馬鹿げたパスかは説明するまでもありません。つまり有効性の低いパス経路と言えます。距離もありますし、成功の確度も低いです。
経路2
経路2のパスは、遮る敵選手もないため非常に成功率は高いと言えます。しかし、わざわざサイドにボールを逃すという意味では、やや消極的なプレーとも言えます。サイドに逃した場合、シュートまでには更にクロスを上げたり、一旦下げたり、仕掛けたりといった手順が必要で、シュートまでの道のりが長くなりそうです。ですが、新たなシュートへの可能性を探るパスと言う見方もできなくはありません。
経路1
経路1は決定的なパスです。通ればゴールを狙える絶好の位置。非常に有効性の高いパスではありますが、パス経路の近くに敵がおり、パスを読んでいる可能性もあるので、パスカットされるかもしれません。
パスの可能性はめまぐるしく変わる
このように、55通りあるパス経路も、敵味方選手の位置取りや、自分の体の向きといった様々な要因によって、その有効性やパスが通る確度がめまぐるしく変化していく事になります。その瞬間、何が最良の選択か、先を考えつつ判断していく必要があるわけです。
ディフェンスとは相手の選択肢を潰していく行為
パスの可能性の話を書きましたが、ディフェンスとは、この相手の可能性(選択肢)を潰していく行為に他なりません。これまた少し極端ですが例を出します。
選択肢が多い状態
この場合、4種類どのパスも通りそうです。特に有効性の高い前線へのパスが選択肢とあります。
マークがついて選択肢が消された状態
この場合、経路1,2,4はマークが付いているので直接のパスは難しそうです。結果的に、相手は前線へのパスという選択肢を潰されて、仕方なく経路3で一旦下げる選択肢を選ばざるを得なくなります。
また、この時ボールを持っている選手にプレスを行う事は、単にボールを取りに行くというだけでなく、相手や周りの選手に可能性を探る時間的猶予与えないようプレッシャーをかける事にもなります。それによって、ボールを持った選手に「ひとまず安全な経路3を選択しよう」という消極的なメンタルを誘発させる事ができます。
スペースへの可能性
と、まあ素直に下げてくれれば一件落着なのですが、やはりそんな簡単なものではありません。パスにも色々種類があるので、フライスルーという選択肢も相手にはあります。
そして、ディフェンスはそれを読んで『スペースを消す』という選択肢があります。しかし、こ
のスペースを消す事によって新たなスペースが出来てしまいます。
上記の場合、左上のスペースへのパスの可能性を防げますが、逆にパスをやめて直接ゴール前までドリブルするという決定的な可能性を与えてしまいます。また、裏のスペースへパスが通れば、パスを出した選手が中央に走りこんでワンツー、又はクロスを警戒する場面です。
そこで、上記例だと裏のスペースを埋めた(またはパスを出した直後に詰めた)味方選手が動いて出来たゴール前バイタルエリアのスペースを「自分」が埋めるといった守備の連動性が必要になってくるわけです。これを体系的にしたものの一種が『ゾーンディフェンス』と言われるものです。
可能性の探りあい
オフェンス側はどういう可能性を見出すか、またボールを持っている味方の可能性を増やすようなポジションを取れるか、ディフェンス側は相手の可能性を察知して潰すか、めまぐるしく変化する状況の中で、その一瞬の判断の積み重ねが結果となって現れます。そしてそれを考えながらプレイすることが、サッカーの頭脳面で必要な事になり、サッカーゲームの多人数協力プレイでも必要になる動き方の基本になります。
得てして、とにかくボールに向かって全員で走りがちになりますが、こういった可能性を潰す、可能性を増やす/見出す事を考えてプレイする事で、よりサッカーゲームを楽しむことができるし、全体として良い試合だったと言えるようなゲームに繋がっていきます。
繰り返しになりますが、この相手のシュートやパスの可能性を潰したり、自分たちのシュートやパスの可能性を創造するには、選手の位置取りが非常に重要です。そしてこれがフォーメーションの話につながっていくわけです。
可能性を潰す行為の例
蛇足ではありますが、一応タイトルにディフェンスとつけちゃったので、可能性を潰すディフェンスというのはどういうものか見て行きたいと思います。
シュートコースを塞ぐ
シュートそのものを打たせない。それによってゴールの可能性を潰すディフェンスです。
前を向かせない(自陣ゴールの方向を、敵に向かせない)
相手の前線へのパスやドリブルの可能性を潰すディフェンスです。
パスコースを切る
相手がパスを出しそうな選手とのパスコースの間に入る事で、パスを出す可能性や、パスが通る可能性を潰すディフェンスです。
マークしてパスを出させない
相手がパスを出しそうな選手をマークすることで、パスを出す可能性や、パスが通る可能性を潰すディフェンスです。
スペースを埋める
相手がパスを出しそうな選手が、走りこみそうなスペースを予め埋めて、パスを出す可能性や、パスが通る可能性を潰すディフェンスです。
前に立ちふさがる
前線へのパス、ドリブルを防ぎ、足止めができます。
ディフェンスラインを押し上げる
ラインコントロールの一種ですが、ディフェンスを押し上げる事で、相手の前線はオフサイドとなるスペースになります。前線へのロングパスという可能性を潰します。もちろんリスクにもなりますが。
フィールドを広く使われるとそれだけ相手に可能性を与える事にもなりますし、自分たちがカバーしなければならないスペースも増えてしまいます。
ボールを奪う
相手がパスを出す可能性、シュートを撃つ可能性を断つディフェンスです。ボールを奪うというのは、相手の可能性を完全に潰す事で、相手にボールを持たせないという事はサッカーにとって最高に攻撃的な状況であり、最高に守備的な状況でもあります。
『相手がボールを持たなければ相手のシュートの可能性がない→点が入らない→絶対に負けない』という事になります(まぁオウンゴールなんてのもありますが)。そしてこれが「ポゼッションサッカー」の考え方の基礎にもなります。
最後に
サッカーは多種多様な可能性があります。選手同士を線で結ぶと55通りといっても、その渡し方一つとっても多彩です。そこがサッカーの面白いところでもあります。
通常では可能性の低いパスやシュートも、選手個々の能力によってこじあけあけた時の魅力、思いもよらない想像力あふれるプレイ、ピッチ上の選手達が行う一瞬の判断とその戦略性。そして神のいたずらとも呼ぶべき偶然の数々。
お互いのチームがお互いの可能性を探りあうその様を見て取れると、サッカーゲームだけなく、リアルのサッカーもより楽しめるのではないかと思います。
【ウイイレ2015】ディフェンスを上手くなりたいのでコツをまとめてみた - 雨の音が好き