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村上春樹が紹介する、チャンドラー方式の文章の書き方とは

 村上春樹のエッセー本、「村上朝日堂はいほー! 」の中の、題「チャンドラー方式」の話。書籍自体は、1983年から5年間に渡って雑誌「ハイファッション」に連載されたものを書籍化したもの。

 村上春樹氏が昔よんだチャンドラーの小説の書き方を思い出しながら語るという内容だ。チャンドラーとはもちろんハードボイルド小説の巨匠レイモンド・チャンドラー村上春樹氏も彼の作品を多く翻訳している。今回はすべてを引用すると長くなるので、少しざっくりと抜粋した。いろんなディティールが抜け落ちているので、興味のある人は是非本を手にとってほしい。

まずはデスクをきちんと定(き)めなさい、とチャンドラーは言う。自分が文章を書くのに適したデスクをひとつ定めるのだ。そしてそこに原稿用紙やら、(アメリカには原稿用紙はないけど、まあそれに類するもの)、万年筆やら資料やらを揃えておく。きちんと整頓しておく必要はないけれど、いつでも仕事ができるという態勢にはキープしておかなくてはならない。
(中略)
たとえ一行も書けないにしても、とにかくそのデスクの前に座りなさい、とチャンドラーは言う。とにかくそのデスクの前で、二時間じっとしていなさい、と。
p.39-40

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 じっとするというのは、なにか文章を書こうと試行錯誤したり、本を読んだり、音楽を聞いたり、猫と遊んだり、誰かと話をしたり、今でいうならテレビを見たり、インターネットなんてもってのほか(そんな事をしたら、2時間なんてあっという間に過ぎてしまう!)、とにかくじっとする。音楽ぐらいいいんじゃないのと思うかも知れないが、耳を奪われ次は何を聴こうと思案し始める。

 WI-FIやら3Gやら、ノートパソコンやらどこでも仕事が出来る時代にあってはかなりストイックな仕事の仕方のように感じてしまう。特に、たとえ一行も書けないにしても、とにかくそのデスクの前に座るというのはなかなか考えるところがある。

 村上春樹自身もこういったスタイルが好きなようで、自身もこのチャンドラー方式を大きくは採用していると述べている(もちろん当時の話だが)。作家の中にはネタを探して東奔西走するタイプもいる。文中にも出てくる、ヘミングウェイなんかはそのタイプだ。書きたい時に書くという意味では同じかもしれないが…。

 なんだか瞑想に近しい行為で、いざやろうと思ってもなかなか大変なんじゃないかと思ってしまう。

 さらに突っ込んだ話はこちら→チャンドラー方式の文章の書き方からみる創作のスタイル - 村上朝日堂はいほー! (村上春樹)

村上春樹 雑文集
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インタビュー、受賞の挨拶、海外版への序文、音楽論、書評、人物論、結婚式の祝電――。初収録エッセイから未発表超短編小説まで満載の、著者初の「雑文集」!1979‐2010。未収録の作品、未発表の文章を村上春樹がセレクトした69篇。
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ロング・グッドバイ』は別格の存在である。
そこには疑いの余地なく、見事に傑出したものがある。――村上春樹(「訳者あとがき」より)
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3冊の「ロング・グッドバイ」を読む―レイモンド・チャンドラー、清水俊二、村上春樹―
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本書は、Raymond Chandler著「THE LONG GOOD-BYE」を原著に第1章から第53章まで「あらすじ」を掲載した上で、清水俊二訳「長いお別れ」、村上春樹訳「ロング・グッドバイ」の訳文の違いをエッセイ風に面白く紹介している。原文に遡り、翻訳の妙、訳者の個性、姿勢、時には勘違いなど、原著を、訳書を2倍楽しむためのガイダンスとも言えよう。翻訳の勉強にもなろう。
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